オリガの念押し
「良いところに店舗を構えられましたね」
まだ店頭に並べられるほど商材を準備できていない、引っ越したすぐに王女オリガがまた1人でやってくる。
食堂でジーモントが昼を用意して皆で食べているところを狙って来たのか、一緒に昼ごはんを食べていくオリガ。
「皆さんがこの街に残ってくださるのはありがたいです。ただ、冒険者として魔物討伐ではなく店舗経営とは……」
「大丈夫ですよ。日頃は地上の角兎やゴブリン討伐ですが、ダンジョンなどにも肉などの素材をとりに行きますから」
「そうして頂けると助かります。そのうち溢れそうなダンジョンはまだ残っていますし」
「この前にいくつも踏破したじゃないですか」
「オンデンスク国に侵攻されて以降、この地域でダンジョン攻略する余力はありませんでしたので……」
辛そうな顔をされると、12歳の見た目よりも幼い外見なので心が痛む。
「分かりましたよ。行けば良いのでしょう?できれば肉が取れる魔物が良いですが」
「ありがとうございます!」
前世記憶があると知っているユリアンネにすると、オリガの顔はわざとであると理解するが、一体いくつまでの経験があったのだろうかと思ってしまう。自分は大学受験までであったので社会経験はしていない。オリガを見ているとかなり社会慣れしているように思ってしまう。
「ユリさん」
それも読まれてしまったのか、オリガが声をかけてくる。
「はい、大丈夫ですよ。ダンジョン攻略、ちゃんとやりますよ。孤児たちのためですし」
「ですよね」
周りには気づかれていないと思うが、自分に対してだけは触れてはいけないことへの別の圧力がかかったと思ってしまう。




