孤児院の見学3
「え?本当ですか?」
流石に100人分以上の料理の炊き出しをするとなると、敷地の端で大掛かりな火の設備を作る必要があるのと、その日に用意する食事量を考えてもらう必要が出るため、孤児院の職員には事前に相談をしに来たのである。
「はい、ぜひやらせてください」
「いえ、そのような。こちらとしても願ってもないことです。ただ、厨房を使わないのですか?」
「はい。目の前で調理を見てもらうことも楽しみになると思いまして」
「それはありがたいのですが」
昨日のユリアンネによる金貨の差し入れには、銀貨との入れ間違いではないかと念押しをされたことも含めて、職員たちには見知らぬ8人組に対して感謝ばかりをされる。
「いえ。これからあの子たちをお願いするかもしれませんし、子どもたちの様子を拝見する目的でもありますので」
「ひもじい思いはさせていないつもりですが……」
「はい。昨日も拝見しましたが、みなが笑顔で、とても良い孤児院と思っております」
そして、敷地の端でジーモントが大鍋を並べて調理を始めると、孤児院の子どもたちも何事かと集まってくる。
「今から料理をするから、ちょっと待ってくれな」
「ほら、食材もどんどん切っていくわよ」
「それまでは、この串焼きでも食べて待っていてね」
「1人1本ずつだからな」
ジーモントとカミラだけでなく、ゾフィとヨルクも一緒に食事の手伝いなどを行っている。
食べ終わって十分に満足した様子の子どもたちに、一緒に食べていたダニークたち6人を紹介するジーモント。
「これからこの子たちのこと、よろしく頼むね」
「あ、見ない顔と思っていたんだ。もちろんだよ」
「「「よろしくね」」」
笑顔で返してくれる孤児院の先輩たちの様子を見て、ミーラたちの不安も消えたようである。




