孤児院の見学
「おいおい、どれだけ広いんだよ」
「これは確かに国の協力がないと無理ね」
ドラゴレシエ国の王都アンダロフにあるデメテル神殿に付属の孤児院。
隣国イスクラディヤ国の港街セントヤールの戦火から逃れるために連れてきた孤児達を預ける下見に来たシミリート、ユリアンネ、ヨルクとゾフィ。
想像していたのは、教会の敷地内に収まる程度の規模であったが、普通に想像する教会よりもとても大きな施設であった。
走り回れる広場も大きく、ユリアンネの前世イメージでは都会の小学校のような感じである。
もしかすると、同じく前世記憶があるオリガがまさに小学校をイメージしながら孤児院を作らせたのかと思ってしまう。
そして、子どもたちの世話をしている人の様子を見ると女性が多い。
「はい。私たちは戦争で夫を亡くしたひとり者が多いです。ここで働くことで、授かることができなかった子どものかわりに、子育てをすることができます」
他にも、自分の子どもが自立した後であるという中年、老人もそれぞれの役割で働いているとのこと。
教会関係者と思われる人はほとんどいなかった。
「はい。昔は教会のみで運営する小さな孤児院でして、その時代はシスターたちが教会の仕事と一緒に孤児院のことも行っていました。しかし、独立してドラゴレシエ国になった後、国家として孤児院の運営を支援してくださるようになってからは、このように一般住民から選ばれた方々でほとんどのことをして貰っています」
「それって、王立みたいな……」
「そうですよね。でも、デメテル様のこと、我々神殿のことをたててくださり、いまだにデメテル神殿の付属ということになっております。おかげで子どもたちに豊穣の女神であるデメテル様の教義を広めることもできております」




