王都アンドロフ
「今度はちゃんと入れたな」
孤児たちに狩りや料理を教えながら、ドラゴレシエ国の中を東進して来た一行。
ようやく王都アンドロフに到着し、西の城門から無事に中に入ることができた。
「どういうことだよ?」
シミリートのつぶやきに、普通にダニークたちは疑問に思う。
「いや、前に来たときには色々とあって、街中に入るところで捕まって、各地のダンジョン踏破することになって」
「何を言っているのか分からんよ」
「……普通はそうだよな……」
「今回はちゃんと宿を取れるかな」
とはいうものの、王都とはいえ裕福ではない国家である。大きな街ではあるが、一般的な王都らしい華やかさがあるわけではない。
「まぁ、独立するときに一番大きかった街を王都に決めて、代官館だったところを城代わりにしただけらしいから」
確かに中心部に塔などのあるお城らしいものは見えない。
「お城を造る余裕なんて無かったんだろうな。それを造るくらいならば、北方の攻められているところの防壁に金も人も材料もまわしたいだろうから」
「本当に、大変な建国だったのね」
「ま、だからオリガ王女もあんな感じなんだろうね」
通常の馬より大きな戦馬が8体も泊められる大きな宿は限られていたが、それでも子どもたちも含めて何とか泊まれることになった。
「野営も楽しいけれど、やっぱり宿に泊まるって楽しいね」
小さな子どもの素直な言葉は響く。
「屋根も壁もちゃんとある部屋のベッドだからね。ゆっくり寝坊しても良いからね」
いくら名刺メダルを貰ったからといって、王女と簡単に会えるとは思えないし、孤児院の話もすんなり整理できないだろうから、しばらくこの宿に泊まるつもりである。




