イスクラディヤ国内2
港街セントヤールを脱出し、東のドラゴレシエ国に戻る途中では、他に大八車などで逃げ出した住民を追い抜いてきた。
「もう徒歩の人たちは見えなくなったわね」
「あぁ、これで街道を走っても大丈夫だな」
安心はしたのだが、次の街で宿に泊まろうとしたときに問題が発生する。
「なんで?この前にこの街に来たときには泊まれたよね?」
「はい、皆様だけでしたら大歓迎です。ただ……」
宿屋の従業員が目線を向けた先にいたのは孤児達である。
ユリアンネの≪洗浄≫魔法で、汚れは落としてあったがどうしても傷んだ服であることは隠しようがない。
「分かったわ。じゃあ、あの子たちの服を買えるところを教えてくれる?」
案内された店で最初に購入したのはローブである。これを羽織れば、中にどのような服を着ていても首から上が≪洗浄≫で清潔にしてあれば文句を言われることもないはずである。
「良いのかよ、こんな綺麗な服……」
ダニークは心配するが、小さな子どもは素直に喜んでいる。
この世界、工場生産の既製品の服があるわけではないので、子供服は特に古着が中心になる。ただ、簡易なローブならばそれほどの手間がかからないので、その場で寸法を見てもらって6人それぞれに新品を与えることにしたのである。
旅を続けるならば、風除けにもなるのでちょうど良い。
そしてそれが完成するまでの間に、それぞれの体格に合わせた古着を探し、何着かずつ購入していく。以前の服にも愛着があったようで、しかも≪洗浄≫された後なので、捨てられないという子供達の希望もあり、魔法の袋に仕舞い込む。




