セントヤールからの脱出
孤児たちの拠点から必要なものを全て回収した後は、シミリートたちと合流し、少しでも人の少なそうな道を選びながら街を出る。
「なぁ、もう1箇所、行って貰えるか?」
ダニークが相談して来たのが、近くの森である。鳥を取っているという罠の回収もしたいというのである。
そんなもの、と言いかけたが、孤児たちにすると自分たちと別れた後に少しでも食べていける手段を確保したいという気持ちなのは理解する。
「へぇ、こんな網があるんだ。良くできているな」
孤児たちが連れて来たのは、木々の合間に張られた網であり、そこには2羽の小鳥がかかっていた。
鳥たちが気付きにくい色の網であり、それに飛行している鳥が引っかかる罠である。
確かにこの罠があれば、孤児たちでも食べ物を確保しやすいのだと理解する。
「でも、他人に獲物を奪われているかもしれないんだよな。紐の結び方が変わっていたりするから」
「そうか。でもこの罠ってどこで買ったんだ?」
「いや、死んでしまった先輩にこの場所を教わったから使っているんだ」
「それって」
つまり、孤児たちの方が他人の罠から勝手に獲物を奪っている状態なのだと理解する。
この罠を持って行くことはやめておくようにダニークたちを説得する。
その代わりに、とその森で見かけた兎などを狩って魔法の袋に収納していく。
「私たちが今度作ってあげるから」
細工職人と皮革職人のカミラとゾフィは罠の様子をしっかり確認してから、孤児たちに言い聞かせている。
「本当に良く考えられているわね。シンプルなのに。きっとこのたるませ方が重要なのね」
再現できるように念入りな調査をしている2人。




