ダニークの決断
港の方から聞こえて来た衝撃音は、おそらく逃げ込んできた船が勢いを落とすことができずに船着場以上に突っ込んでしまった音だと思われる。
しかしそのようなことは、孤児たちには分からない。
先ほどまでの遠くの炎と違い、何か身の危険を感じさせられる音であった。
「ダク!怖いよ!」
小さな子供ほど自分にしがみついてくるし、そこまでではない弟分たちも不安そうに自分を見てくる。
このままこのセントヤールの街に残って、生きていけるのだろうか。
今まででも、自分がスリをしないと食べ物が不足していた。しかし昨日のようにスリに失敗したら、戦争になって殺気だっている大人たちには殺されてしまうかもしれない。
そうなると子供たちはますます食べ物に困る。
この街に居続けることと、昨日に知り合ったお人好しの大人たちについていくのと、どちらがこの子供たちのためになるのか。
14歳には見えない成長度合いなダニークは、その小さな頭で最善を考えようとする。
しかし、少しだけ年下の弟分たちがその様子を見て話しかけてくる。
「ダク、俺たちもいるよ。どっちを選んでも、一緒に頑張るよ」
「そうだよ。俺たちもできることをするよ」
「ダク、わたしたちだって何でもできるよ」
だんだん年下の子供たちまで、年上の子供たちの雰囲気を察したのか、しがみつきながら発言してくる。
「お前たち……」
「ダク」
そこにユリアンネが再び声をかける。
「……わかった。あんたたちを信じる。この子たちを頼むよ」
ダニークが振り向いて頭を下げる。すると、周りの子供たちも頭を下げてくる。




