イスクラディヤの開戦
「そうか、あの炎はハンソク王国の軍船が……」
港の役所に行ったシミリートとサンダーの話を聞くはずが、ユリアンネがシルヴィスで知った沖の方の情報共有が先になってしまった。
「で、ここに被害が来るまでは時間もかかりそうだから、孤児たちを落ち着かせているところなのよ」
「状況は理解した。こっちの役所の方はひどい状況だった」
シミリートよりサンダーの方が要領よく話してくれそうだと、本人たちも理解しているのかサンダーが話し出す。
街中の警鐘を鳴らせたのは役所の指示らしい。
北方のオンデンスク国がイスクラディヤ国に攻め込んで来たのが、狼煙で国中に伝わったところで、今度は沖にいたハンソク王国からも狼煙と旗信号で宣戦布告された。
そこで、このセントヤールの街は被害を被る可能性があるため警鐘となった、と。
オンデンスク国とハンソク王国に挟み撃ちされることになったイスクラディヤ国。
「でも変ね。確かに数十隻ものハンソク王国の軍船が見えたけれど、この港街を簡単に制圧できるほどの戦力には思えないわよ」
「そうか。役所でも混乱していて、俺たちが話を聞けたのはそこまでだった。もしかしたら上層部はもっと情報があるかもしれないが」
「ユリ、占領をされるほどではなくても、この街は結構な被害が出そうな数よね?」
「えぇ、そう思うわ」
「じゃあ、オンデンスク国がいくら軍事国家と言っても国境から距離はあるのだから、北の内陸側に逃げた方が安全ということかしら」
「俺たちだけでなく孤児にもそう伝えるか」
「住みなれた街から出ていってくれるかしら」
誰も孤児をこの場所に置いていく思考になっていないことを当然と思いつつ、この先のことを思うと大変だと思ってしまう、リーダーの自覚はあるシミリート。




