カミラの危機2
「どうすれば良いの!?」
ユリアンネ達は“オトマン書肆”に集まっている。
カミラの実家に、カミラを預かったという旨の手紙が投げ込まれたらしく、そこに名前が記載されていたヨルク、ゾフィにカミラの両親が連絡を取ったことから情報が伝達された。そしてターゲットになっているユリアンネに街を歩かせないためにここに集合することになった。
集まっているのはカミラの両親、ヨルク、ゾフィ、ユリアンネ、シミリート、ジーモント、そして集合場所の主オトマンである。
「ユリを尾行したときに工芸屋のことは知ったのと、近所からの聞き込みでカミラ、ヨルク、ゾフィの幼なじみ組のことは分かったのだろう。ユリの名前がないということは、顔を隠した薬師が誰なのかは分かっていないのだろう。それに俺やジモも尾行当日に一緒に行動していないし、近所ではないから……」
「私があの日に工芸屋に行かなければ……」
「ユリちゃん、それは違うわよ。相手が悪いことを自分のせいにしないで。でもカミラを助けて欲しいの、みんな何とかお願い……」
カミラの両親はユリアンネを責めないが、助けて欲しいと懇願する。
手紙には、衛兵団など外部に知らせるな、薬師と引き換える場所は迷宮内、それも21階層と指定されていた。カミラから転移可能な階数の情報は伝わっているようである。
「どこか倉庫とかを指定していないのは、近所の住民を含めた有象無象が大人数で来られることや衛兵達がこっそり遠巻きで来ることを回避するためなんだろうな」
「21階層だなんて、腕に自信があるんだな」
「あぁ、悪名高いクランだが、それなりにベテランの人数も多いようだな」
「で、シミのことは知られていないようだが、衛兵団やその他にはどうすれば?」
「この手紙、単に友達との待ち合わせ場所を書いているような表現だから、誘拐の証拠にはならない巧妙なやり口だし、マンファン分隊長には相談するが大々的な協力は得られないだろう。“蒼海の眼”の息がかかった奴も何処にいるかわからないから話を広げられない。それにうちの分隊でも全員が21階層までは到達経験があるわけでは無い……」




