セントヤールでの宿泊3
先に出てきていたまだ大きめの子供たちが食事を始めて、特に問題がないとわかると、だんだんと小さな子供たちも出てくる。
「やっとみんな来たのかな。流石に赤ん坊はいないのか」
「あぁ、俺たちの仲間は自分の足で逃げられるやつだけだ」
ダニークの返事ではあるが、見た感じでは3〜4歳程度に見える子供もいる。
「今日は私たちがご飯をあげているけれど、いつもはどうしているの?」
「ダクたちが持って来てくれるよ」
「海で魚を取るよ」
「森で罠を仕掛けるよ」
小さな子供たちは、大きい子がスリをしているとは思っていないようである。
「浅瀬で魚を取ったり、森で鳥を捕まえたりするのは本当だぞ」
こちらの思いを理解したのか、ダニークが補足してくる。
「なるほどね。で、ダクって呼ばれているのね」
「小さな子供でも言いやすいからな」
微妙に照れている表情は、さらに幼く見える。
合計で6人となった子供たちにしっかり食事を取らせた頃、街中の警鐘が鳴り響く。
「おい、何だ!?」
「火事か?」
「いや、こんなことは過去に無かった」
ダニークやそれなりに大きな子供たちも経験がないと首を振る。
「流石にただ事ではないよな。確認してこよう」
シミリートとサンダーが、昨日にユリアンネと行った港の役所に戦馬で確認に向かう。
「ダニークたちも、状況がわかるまで私たちと一緒にいてくれる?」
「あ、あぁ。でもここが危なくなったら逃げるぞ」
「もちろんよ。でも逃げ先が危ないかもしれないからね。私たちは強い冒険者だから」
ユリアンネは銀級の冒険者証を見せて、その説明をする。
意味が分からない小さな子も、大きい子が驚いている声に合わせてすごいと言ってくれるのが少し照れくさい。




