セントヤールでの宿泊2
「おかしいわね。やっぱり警戒されちゃったのかな」
昨日にダニークが指定したと思われる場所に来たのだが、子供たちは見当たらない。
「いいえ、あっちの方に子供がたくさんいるわよ」
目をつぶりながら使い魔シルヴィスの視界で確認したユリアンネの言葉である。
「逆に私たちが罠にはめられたのでは無くて良かったわ」
この世の中、何があるか分からない。ダニークが盗賊たちを連れてくる可能性もある。
本人が望まなくても、昨日にお土産で持ち帰った食べ物を見られて、近くの悪者が他の子供を人質にするという話もあり得たと考えたのである。
「ま、彼らが安心するまで待ちましょう」
よく周りを見れば、確かにここならば、子供たちは散り散りになれば崩れかけの家の隙間を使ったり、複雑な路地を使って逃げたりできると思われる。
この場所に不慣れな旅人が子供を捕まえる危険が少ないと、ダニークなりに考えたのだと理解できる。
まさか使い魔が空を飛んで確認するなんて思いつきもしないのだろう。
「本当に来たんだな、あんたたち」
それでも警戒しているのかダニークだけが姿をあらわす。
「そうだよ。ほら、食べ物を持って来たよ。隠れている子たちも出てこないと食べられないよ」
目の前に布を敷いて、食べ物を並べていく。
今回のために屋台で買って来たものだけでなく、ジーモントは鍋のセットを取り出して温かいスープも提供しようとしている。
ダニークの次に出て来たのは、孤児の中でも大きい子たちだけであった。
「まだ警戒しているのだよね。でも、それでは温かいスープは持ち帰れないでしょう?」




