ユリアンネの夢3
「ま、普通は警戒するよな」
孤児のダニークは他の仲間がいる場所を教えないという。
「食べ物を持っていくだけだよ」
「それが信用できないんだよ。どこにそんなお人好しがいるんだ!きっと騙して奴隷屋にでも売るんだろう?」
「やっぱりそう思ってしまうか……」
「ユリ、孤児院をやるって言ってもこういうように思われるだろうな。教会などの付属でもないと。個人でやるとなれば余計に、豪商や貴族に見た目の良い子供を売るとか、奴隷として売るためだと思われるってことだよ」
「そうね……少しずつ実績を作るしかないわよね」
「ま、ユリなら大丈夫だろうね。例えばトリアンの街なら。でも、ここはセントヤールだし、すぐに居なくなる街だからなぁ」
「そうね。拠点を知られるのが嫌なのは分かったわ。その隠れ家ではない別のところに連れて来て貰うのはどう?」
「そこに食べ物を用意しておくのか。いいアイデアだと思うんだが」
「本当にそこに行っても、みんなを捕まえないってどう信じたら良い?」
「ダニーク。世の中の皆を何も考えずに信じろとは言わない。逆に危険だからな。ただ、本当に自分のことを思ってくれているかどうかは見極められるようになれ。これから大人になって行くならば、大事なことだ」
孤児院の話で盛り上がる仲間たちの会話からは距離をとっていたサンダーが、ダニークの目線に合わせるようにしゃがみながら目を見て話しかける。
「う、分かった……」
「よし、いざとなったら自分たちが逃げやすい場所でも良いぞ。どこに行けばいい?」
「明日の朝、港のはずれの赤い屋根のところで」
「なぁ、サンダーの方が孤児院の運営に向いているんじゃないか?」
「本当だね……」
「いや、1人の人間として向き合おうとしただけで……」
サンダーが珍しく照れている。




