孤児ダニーク
「使い魔?十分間に合っているわよ」
ユリアンネは、スリの少年が使い魔としてスケルトンやゾンビにされるのか?と言う質問をしてきたので、自身の本当の使い魔であるシルヴィスをダニークに見せる。
自身の腕輪から小さなワイバーン形状になるところまで見せ、さらにその付近を飛ぶ様子を見せると、ダニークは食事も忘れて見入っている。
「これって銀なのか?それが動くのか?やっぱり魔法ってすごいんだな」
「まぁ銀は銀でも魔銀、ミスリルよ」
「これが!名前しか知らないぞ」
素直な感動が照れ臭いながらに嬉しいユリアンネは、ダニークに食事を促しながら、彼の前でシルヴィスを飛ばし続ける。
「で、どうする?」
「そうね。結局は空腹でスリをしたのよね。それに守りたい仲間がいるってことは、きっと孤児がたくさんいるってことかしら」
「まさかの罠ってこともないだろうけれど、二人だけでその孤児たちのところに行くのは危険だから、皆のところにいったん戻らないか?」
「うーん。皆で行くと警戒されると思うけれど。ま、私たちの帰りが遅くなると心配されるだろうし、まず戻るしかないわね」
「俺はどこに連れて行かれるんだ?衛兵のところか?」
「ま、その選択肢もあったんだけど、今は私たちの仲間のところよ」
「え?魔法使いの仲間?いよいよ大釜でゆでられるのか?」
「なんて発想しているんだよ!俺たちは旅でここに来ているだけだから、そんな大釜のある場所なんてないぞ」
「シミ、違うでしょう!大釜なんて持っていないわよ。薬草を調合するにしても、こんな少年を入れるような大釜ではないわよ」




