スリ3
「よし、逃げずに居たな」
戻ってきたシミリートは、簡単に食べられそうな串焼きと持ち歩きのしやすいパンを買って来たようで、まずはその串焼きを差し出す。
「当たり前だろう!あんな杖を向けられて。魔法使いと知っていたら手を出すことなんてしなかったのに」
差し出された串を奪うように受け取ったダニークは、その肉にかぶりつきながら答える。
「え?」
シミリートとユリアンネは自分たちの魔法に慣れているため、その発想は無かった。
「何をされると思ったんだ?」
「え?魔法使いだったら、強引に手下にできるんだろう?例えば、スケルトンやゾンビにして操ったり……」
「あ!」
確かに死霊魔法を使えるユリアンネは死体を操ることもできる。人間で試したことはないが、死霊魔法使いであること自体は間違えていないということを、互いの顔を見て頷いてしまうシミリートとユリアンネ。
「やっぱり……これを食べ終わったらそうなるのか?だったら、これ、届けたい奴らがいるんだが」
「ほぉ」
「いや、やっぱり良い。あいつらまで狙わないでくれ。ここで腹一杯食べたら言うことを聞くから、あいつらのことは」
食べ物を地面につけないように座りながら頭を下げてくるダニーク。
「なんか悪の魔法使いとその手下になった気分だな」
「シミ、余計なことは言わなくて良いの」
シミリートとユリアンネの会話を見て、ダニークは自分が勘違いをしている可能性を考える。確かに手下にする前に食事を施す必要があるか?
「なぁ、俺はこれからどうなるんだ?死体になって使い魔になるのではないのか?」




