スリ
「この野郎!なんてことしやがる!」
「シミ、やりすぎよ」
色々な船が停泊していた港から離れ、サンダーたちが待つはずの場所に戻るには、再び活気あふれる屋台エリアを通ることになる。
その場所で、ユリアンネの懐を狙うスリがいたのである。
たまたまユリアンネが気になった海藻の屋台で商品を覗き込むためにかがもうとしたところであり、腹部付近をさぐろうと伸ばして来たスリの手は胸付近に向かうことになる。
「キャ!」
ユリアンネの小さな悲鳴に気づいたシミリートが状況に気づき、両腕を交差させながらしゃがみ込むユリアンネの横で戸惑っている少年の腕をつかみ上げて、屋台と屋台の間の裏路地に放り投げたのである。
「は!腹か胸かも分からないような奴の…」
「何ですって!」
少年が全てを言い切らないうちに、ユリアンネが魔法の杖を取り出してその杖を少年に向ける。
「バカ!謝れ!いいから謝れ!」
まだ何か言い続けようとしていたのに、シミリートの態度に困惑しながら少年はすぐに地面に座り直して頭を下げる。
「ごめんよ。悪かった」
よく見ると少年と呼ぶよりもまだまだ子供に見える男の子であった。
大人気ないと反省しながらユリアンネは懐を改めて確認する。魔法の収納袋に入れていない貨幣の袋には金貨などは入れておらず、数枚の銀貨以外は銅貨ばかりである。
「何も盗られていないみたいだわ」
「とは言え、この野郎?いや、ガキ?は」
「ガキじゃねぇ、俺は来年には成人する14歳だ!」
栄養不足なために成長不足となったのか、とても14歳の少年には見えない体格であった。
12歳に見えない体格であった少女のオリガのことも思い出す。




