港街セントヤール3
ユリアンネが性的な奴隷の売り込みと勘違いされ、さらにその割にボリュームが少ないと言われて憤慨することになる問題はあったが、いくつかの情報を入手することはできた。
風花の中つ国から、ハンソク王国の港セグン、このイスクラディヤ国の港セントヤールを経由して迷宮都市トリアンに向かう航路は残念ながら復活していない。
しかし、このセントヤールからトリアンに向かう船がないわけではない。
ただ、直行便が定期的にあるわけではない。往路は潮の流れで容易だが、復路が逆行するので陸沿いの少しずつ北上して戻ることになりコストがかかるらしい。
さらに、その高コストを賄えるものということで、密貿易や密航が横行しているようで、素人が高額な船賃を払って乗船しても、その後に身ぐるみ剥がれて殺される可能性もあると脅される。
「ま、半分が女性である “選ばれた盟友”が乗船するのはやめておいた方が良いだろうな。下手な賊くらい返り討ちにできたとしても船を操れるわけがないし」
「そうね。信頼できない船に乗って逃げ場が無くなるなんて想像したくもないわ」
「それに、こっちに戻るときのことを考えて小さな船ばかりになるらしいから、うちの戦馬8体なんて乗せられないって」
「船に乗るためにゼラたちとお別れするなんて考えられないから」
「そうなるよな。だから、陸路の旅を継続だってみんなに伝えないとな」
「さっきの奴隷の話は言わなくて良いからね」
「分かっているさ」
「シミは言いそうだから、しっかり念を押しておかないと」
「信用が無いなぁ……」
結局、シミリートはその日には言わなくても、後日に口を滑らせてユリアンネを怒らせてしまうことになるのであった。




