港街セントヤール2
「ん、航路?あぁ、中つ国からモンタール王国への船か」
「はい、しばらく止まっていると聞いたのですが」
屈強な感じの船乗りたちが行き交う港の建物。船の出入りを仕切る立場の役所であると案内されて、そこの中に入ったシミリートとユリアンネ。
「海賊騒ぎで止まったままだな。中継の島の復興に時間がかかっているらしい。何せ潮の関係で、左回りの一方通行になるからな」
「では、この街からトリアンの街への直通便などはありませんか?」
「ふぅん。お前たちそういうことなのか?まぁここで融通する訳にいかないが、港で適当に聞いてみたらどうだ?」
それ以上を聞こうとしても、忙しいからとさっさと追い出されてしまう。
「どういうことだ?」
「私たちの見た目が剣士と魔法使いだから迷宮都市トリアンに向かいたいと思われたのかしら。でも、だから何かは分からないわね」
「じゃあ、その辺のやつに聞いてみるか」
「失礼な話ね!」
「ユリ!まぁ仕方なかっただろう」
色々と聞き込みをして分かったことだが、この国の将来に嫌気がさして成り上がりを考えて迷宮都市トリアンに向かう者が多いとのこと。しかも男女二人が駆け落ちをするのに、陸路と違って追いかけられにくい海路を考えるらしい。役所の職員の想像もそうだったのだろう。
ただ、それだけならユリアンネが憤慨することはないのだが、別の想定もあったらしい。
「ユリがローブだけで、魔法の杖もしまっていたから、魔法使いに思われなかったんだよ」
「だからって、奴隷の売り込みと間違われるなんて!」
「まぁ、港で見目の良い女の子を連れている男が船乗りに声をかけるって、そう勘違いされるんだな……」




