港街セントヤール
「あぁ、潮の香りがするわね」
「船も見えるし、港町って感じね」
ドラゴレシエ国を出てしばらくすると、大きな港街であるセントヤールに到着する。
「本当は船の航路が復活していたら、風花の中つ国からの船はここを経由して、そのままモンタール王国のトリアンに到着できたはずなのよね」
「航路が復活していないか、念の為に聞いてみましょうよ」
「ハンソク王国の港街セグンのときではまだだったからね」
「ここも、漁港も一緒なのね。魚介類の屋台が豊富ね」
「あぁ、あれ美味そうだな。焼いた香ばしい匂いが」
「ヨルク、ここではぐれると大変よ!」
仕方ないのでシミリートが三手に分かれることを決める。
食に我慢できそうにないヨルク側にゾフィとカミラとジーモント。そして人混みを戦馬で移動するわけにいかないので、サンダーとドロテアが留守番。
「で、私はシミと港で航路の確認ということね」
「なんかユリは不満そうだな」
「ま、良いわよ。そのかわり、変なのが絡んできたらちゃんと守ってね」
「おぅ、任せておけ!」
この地域だけは住民の覇気のなさもどこかに行ったような、屋台の人混みを上手く回避しながら港の中心部と思われるところを目指して進む二人。大型船の到着する辺りに向かえば、航路の話も聞けると思われる。もし中つ国からの船便が復活していなくても、ここからトリアンに直接向かう船が別にあれば、早めに帰国できるからである。
皆がそれで帰国するよりも陸路をもっと楽しみたいというかもしれないが、選択肢の確認をするためでもある。
その意味では、この二人かサンダーとドロテアの二人組が確認者には相応しいのだろう。




