ドラゴレシエ出国3
ドラゴレシエの西の国境付近で、こっそりとオリガに誘い出されたユリアンネ。
「同じ匂い?」
「いえ、もちろん深くは結構です。皆さんより一歩引いた立場で見られているところなどですよ。名刺メダルは本当はあなただけに差し上げたかったのですが、表のリーダーも拗ねるでしょうし、銀級の2人にということにしました」
「とは言っても、私たちはもうここには来ないと思いますよ。モンタール王国は遠いので」
「あ、その言葉のやり取りのときに失敗しましたよね。普通の12歳がそんなことを知っている世界では無いですからね。義務教育なんてないのですから」
「……」
「私も余計なことは言いません。ただ、もし何かあれば私のことを思い出してください。逆に私も思い出すかもしれませんが」
「魔物退治には簡単に来られない距離ですからね」
「皆さんのおかげでしばらくは大丈夫だと思います」
「ユリ、そろそろ行ける?」
「大丈夫よ」
「封印、大丈夫でした?」
「なんのことですか?」
「あら、そう言う返事ってことは、そちらも安心して良さそうですね。本当にありがとうございました」
改めて頭を下げるオリガ。周りの目もあるから深々ではないようであった。
「他国の密偵でもなさそうでしたし、私も見る目があったのですね。いえ、と言うよりは、本当にこのタイミングで皆さんが通られた天運に感謝ですわ」
「もう大丈夫だった?こっちはホラ。ちゃんと次の国、イスクラディヤ国の貨幣で支払いをして貰ったわよ。色をつけて貰う代わりに」
「カミラさん、お金のない国なのでお礼もまともにできないので申し訳ありません」
「あ、オリガ王女。大丈夫ですよ。皆さんのためになったのなら」
オリガは長々とした別れの挨拶もできない立場であろうから、適当なところで切り上げて橋にのってイスクラディヤ国に向かう。




