ドラゴレシエ出国2
「人質のふりなんてせずに素直に頼って貰っても良かったのに」
「いや、カミラ。俺たちはこの国を早く通過するようにって考えていただろう?それが普通だろうから」
オリガからは人質が芝居であったことも聞いて、微妙な表情の仲間たち。
「で、オリガちゃん。いえ、オリガさんは一体どのような立場なのですか?このように兵の方たちと連携して無茶ができるなんて」
「でも、冒険者としてあの村の近くで角兎を狩っていたのは事実なのでしょう?」
「はい。シミリートさんとユリアンネさんにはこちらを差し上げます」
「これは!」
名刺メダルである。しかもこの国の貨幣にも記されている王家の紋章が刻まれている。
「はい、私の名前はオリガ・ドラゴレシエ。一応はこの国の王女です。ですが、歴史もないこの国ですし、オンデンスク国の侵略に耐えることでいっぱいですので、世にいう王女らしい立場ではありません。ですので、せめて王都近くの村には肉を届けたいという思いを実現する自由があります」
「王女殿下!」
皆が慌ててひざまずこうとするが、それを止めるオリガ。
「いえ、皆さんのおかげでこの国の民が救われます。こちらがお礼を言う立場ですので」
オリガが深々と頭を下げるのに合わせて、周りの兵士たちも頭を下げてくる。
カミラが魔法の収納袋に入れた素材を売却する手続きをしている間に、オリガがユリアンネに近づいてくる。
「ユリアンネさん、少し良いですか?」
「はい、もちろんです」
小声で言われた言葉に、同じく小声で答えて皆と少し離れたところに移動する。
「あなたは私と同じ匂いがしますね」




