尾行の後始末
ユリアンネがアロマもどきに挑戦して、尾行されていたことへの現実逃避をしていた頃、シミリート達は尾行していた“蒼海の眼”2人の対応を続けていた。
単に女性を尾行していたことと、衛兵に逆らい剣を抜いたが結局は怪我人が出ずに済んだことだけでは、そこまで何日も拘束できるわけではない。麻薬騒動の時のことを踏まえてユリアンネに対して便宜を図るつもりであった分隊長のマンファンも、他の分隊にも気づかれた状況では、ある程度で釈放を決めるしかなかった。
そこで尋問の最終結論としては、“蒼海の眼”が自分たちのクランに有望な薬師を勧誘するのに行き過ぎた行為をしていたこと、それを咎めた衛兵に対して剣を抜いて逆らったことを持って、しばらく拘束したことが2人への罰としつつ“蒼海の眼”へも厳重注意を出して終わることになった。
どうもどこかから上の方に圧力があったようで、そこが落とし所となった。他の業務へ専念するように、この尾行関係へのさらなる捜査活動も禁止された。
「シミ、どうやら今回の後ろには貴族がいるようだ。今回の圧力の感じから想像すると。前の麻薬の時と同じかは分からないが。良いか、このことは他の奴にも言うなよ」
「分隊長……」
「お前の幼なじみ、今後も目をつけられるかもしれない。お前が守ってやるつもりならば、もっと強くなれ。そして偉くなれ」
マンファンに個別に呼ばれたシミリートは秘密の話の後、槍術の道場を紹介される。
「剣術道場では無いのですか?」
「知っての通り俺は槍術が得意だが、その俺の師匠の道場だ。俺も昔、衛兵は剣よりも槍と言われて通ったんだ」
シミリートは兵士になるつもりで鍛えていたので、片手剣だけでなく短槍も冒険で使用はしていたが、なんだかんだと片手剣がメインになってしまい、衛兵仲間より槍術が弱いことを指摘されていた。
片手剣と盾では武技を発動できるようになったが、槍ではまだであるのもその1つである。




