尾行3
「え!?ちょっと待ってよ」
尾行していた男2人が自分達に向かって来るので、カミラも慌てて片手剣を抜いて構えるが、対人経験はまともに無いので腰が引けている。ヨルクは戦斧を持っていないし、ドワーフらしく低身長ではあるが、先ほど食べた串を手に自ら前に出る。
「観念しろ!」
ヨルクや衛兵から声をかけられるが、それでも突進してくる男2人に、ユリアンネが魔法の杖、スタッフを突き出して魔法を連続発動する。
≪水球≫。ユリアンネが≪火球≫の魔術語から推測して試してみたら成功した、魔導書なしで習得した水魔法である。捕まえて情報を引き出す必要があるため、攻撃力のある火魔法ではなく水魔法を選んである。
水の塊が2つ、勢いよく発射され、男たちの顔にそれぞれぶつかる。
「ブッ!」
「オワ!」
声にならない音が漏れて、突進の勢いを殺された上に目をつぶってしまった男2人は、ヨルクに腹を殴られ、さらに追い付いたシミリートを含めた衛兵に押し倒される。
「抵抗するな!」
武器などを取り上げて後ろで縛りつけたまま衛兵の詰所に連れて行かれる2人。
「念のためにみんなはユリを家まで送ってあげてくれ。尋問の結果などはまた教えるから」
シミリートが男たちに聞こえないように話しかけてくる。
夜になり“オトマン書肆”にシミリートがやって来て状況を説明してくれる。もう遅くなっていたので、少し遠くに住んでいるカミラ、ゾフィ、ヨルクは帰宅し、もっと近所のジーモントが交代で来ていた。
ユリアンネ、オトマン、ジーモントに話をはじめるシミリート。
「あの2人は悪評が高いクラン“蒼海の眼”の冒険者だったよ。そう、海賊上がりの集団と言われて、結構裏の仕事もしているという噂のクランだよ」




