尾行
冒険者ギルドに納品した後、薬瓶の仕入れのためにカミラの実家の工芸屋に向かうユリアンネ。そのため、“オトマン書肆”のあるエリアよりは庶民的なエリアを通行している。
ギルドには人の少ない昼間に納品に行ったため、まだまだ明るい日中という油断もあり、近道だが人通りのない細道に入ってしまう。
『あれ?』
そのおかげで、何故か少し離れたところに足音がついて来るのに気づく。
『いや、自意識過剰?でもさっきギルド職員にも注意喚起されたところだし……少し早足にすると足音も早足になった気がする。ここで駆け出してしまって、もし本気で追いかけられたら捕まってしまうだろうから、気づいていないフリで』
とは思いつつも気持ちがあせった早足のまま進み、カミラの工芸屋に駆け込む。
「ユリ、どうしたの?そんなに息を切らせて」
「ハァハァハァ……私の後ろに1〜2人ぐらい後をつけている人がいるかも……」
「え!?もしかしてアレかな。2人組が角からこっちを見ているわ」
「気づいていないフリで。ちょっと休憩させて」
一息ついてから、先ほどのギルドでのやり取りをカミラに伝える。
「もしかすると薬瓶の納品を見られたのかもね。確証が無いから尾行しているのか。で、ユリがどこかの薬師の店舗に帰ればそこが当たりだとか」
「オトマンさんのところに帰ると迷惑をかけてしまうわね。近所のヨルクとゾフィにもここに来て貰えるかしら。で、状況を説明してシミの勤務先に駆け込むとか」
「そうね。この状況で一人歩きは危ないわね」
裏口から出たカミラがヨルクとゾフィを連れてくる。話をした後、「じゃあ私が」とゾフィが先にシミリートが居るはずの衛兵の詰所に向かって裏口から出ていく。
尾行して来た冒険者風の2人が居ることを確認した上で、ユリアンネはカミラとヨルクの3人で工芸屋の正面口から出る。




