成人祝い
この世界では一般市民は誕生日のお祝いを重視していないが、15歳の成人に対しては一つの区切りとして知人も集まって盛大に行う。
ユリアンネは孤児だったこともあり本当の誕生日は知らない。そういう子供たちの誕生日は1月1日という扱いにすることも多いのだが、ユリアンネが孤児であったことを気づかないように、養父ラルフと養母ルイーサは引き取った日を誕生日に決めていた。ちょうどそこが1歳の誕生日であった扱いである。
養女であることを知った後も、“オトマン書肆”に後継として住み込み見習いを始めた後もその誕生日の設定は変えていない。
そのため、今日この日がユリアンネの誕生日であり、成人となる。
“オトマン書肆”に、父ラルフ、姉アマルダ、幼なじみの冒険者パーティー“選ばれた盟友”のシミリート、ヨルク、カミラ、ゾフィ、ジーモントが集まってくれている。
“選ばれた盟友”内の成人祝いは冒険でも役立つ武器や防具などになる慣例がヨルクやシミリートのときにできており、すでにヨルクの父の手によるダガーが高級上位の品で持っていたので、高級上位のローブのプレゼントを貰う。今までと同じく黒色ではあるが、今度の物は少し濃紺に近い黒色であった。
「みんなありがとう!」
「まぁ魔法の杖、スタッフは自分で試行錯誤したかっただろうし、あなたも女の子なのだから少しは違う服も、と言いたかったんだけどね」
「ゾフィのこだわりね、単なる黒より少し濃紺っぽいのは。色々と考えてくれてありがとうね」
「私たちからはこれね。同じくユリに少しはオシャレをして欲しいと思って」
「お母さん、ルイーサの銀髪と碧眼に似合っていた髪飾りだよ。アマとも相談して、金髪のアマよりも銀髪碧眼のユリに、と」
水色の水晶が銀縁であしらわれた、水仙のような髪飾りであった。
「お母さんの形見……良いの?」
「良いのよ。ユリが貰ってくれたら嬉しいわ。使ってオシャレしてくれるともっと嬉しいのだけど」
言葉に詰まりながらしばらく俯いていたのだが、頭を上げて早速その髪飾りをつけて皆に見てもらうユリアンネ。




