麻薬騒動3
前世記憶でも大麻は時代や国によって合法であったり、医療でも使ったりしていたことの認識はあるユリアンネ。ただ、覚醒剤や脱法ドラッグなどと合わせて麻薬が若者を蝕む悪影響を、薬剤師を目指す受験生としても知っていた彼女は、麻薬の悪い面に対して特に嫌悪感がある。
また、以前に父ラルフに聞いた悪徳薬師の一人であるかもしれない、今回の麻薬販売の薬師に対してもっと嫌悪感があり、なんだかんだとシミリートに付き合うつもりである。
「ほら、これが中級と売っていた薬になる」
シミリートが捜査対象の店舗から購入して来た薬瓶を鑑定してみるが、いずれも中級どころか下級下位程度の品質であった。素材をケチったか、水で薄めたか、いずれにせよ中級と偽っている悪意は確実である。
「こんな薬師が店舗を持っているなんて……」
「周りへの聞き込み結果では、あそこは借家で最近に店を構えたらしい。たまにしか客も来ないし、来た客から金を返すよう怒鳴られている様子も見かけたと。もしかすると短期の商売をして逃げるつもりなのかもしれないな」
「こんなことして薬師の評判を下げる人、許せないわね!」
「じゃあもう一度行くぞ」
日を改めてシミリートが、効果がないと文句を言いに行くと、やはり薄い麻薬を渡して来ていた。もちろんそれは証拠として置いておきシミリートは飲んでいないのだが、その翌日にもう一度行くと少し濃くした麻薬を渡された。
それ以上繰り返すにはシミリートの大根役者で相手に感づかれる懸念もあるので、これらの証拠で十分と、マンファン以下、衛兵の分隊が誰も逃さないように捕物を行うことになった。
「普通の調合道具や素材もあったが、麻薬関係の方が充実していて、あきれる場所だったよ」
捕物が終わり、落ち着いたところでシミリートがユリアンネに報告してくる。
「あの薬師の背後にはどんな奴が居るのか、これから尋問してどんどん芋づる式に捕まえてやるぞ」




