呪符
日帰り前提で入口付近から動かないように意図しているため、それなりに多めに素材をはぎ取り残している。
「さぁ肉だ、ハイオークの肉だ」
ヨルクが嬉しそうにジーモントによる料理、とは言っても焼いて塩を振る程度の調理を楽しそうに見ている。
「あれ、また“極東の輪舞曲”みたいだな」
前回に21階の出口付近で集団行動をしていた大規模クランである。左上腕部に青色の布を巻いているので間違いないのであろう。
「やっぱりこの階層はメンバ育成にちょうど良いのだろうな。さっきも領軍を見かけたし」
「じゃあ、あの赤髪の集団はどのクランかな」
「赤髪?この地方で赤髪は多いからな。それにちなんだクランも、“朱き探索隊”、“深緋の戦隊”、“魔窟の赤炎”、他にも色々あるし。あれは左上腕部に赤色の布を巻いているから“深緋の戦隊”かな」
「流石は衛兵のシミ!」
「まぁ職業柄、そういうのは覚えていくよ」
ユリアンネは父ラルフがよく依頼していた赤髪の3人パーティー“猛々しき炎熱”を思い出す。
そしてその“極東の輪舞曲”が通常の魔法と違う物を発動しているのが気になる。以前も21階の奥で、地面の魔法陣らしき物に足を踏み入れると炎が吹き上がったり、何かが書かれているような札がいくつかぶら下がった紐に触れると痺れて動けなくなったりするのを見ていた。
今回は、何かが書かれている札を魔物に投げつけると炎のダメージを与えているようである。
「あれって、魔法のスクロールとは違うのよね?」
「確かに普通のスクロールって名前の通り巻物形状で、あんな長さ2〜30cmくらいの長方形の札ではないわよね」




