鑑定魔法
最近ガラクタ市に来たときには、習得した鑑定魔法の訓練をしていたユリアンネ。
ヨルクに声をかけられた広剣についても既に鑑定魔法を行っていた。そのため、鍛冶屋見習いで武器に対する目利きができるヨルクだけでなく、ユリアンネもその品質を認識できていた。
鑑定魔法は無属性の魔法であり魔法陣は白色になる。ただ、流石に詠唱や魔法陣を見られると売主も気を悪くするかもしれないため、詠唱や魔法陣を無で発動できるようになってから、市で利用するようになっている。
習得したのは初級の≪簡易鑑定≫までであり、初級・中級・高級などのそれぞれ下位・中位・上位と、魔法付与など特殊効果の有無がわかる程度である。人の鑑定はできない。
前世の知識があるユリアンネにもこの魔法の仕組みはわからず、火風水土光闇の6属性が何らかの自然現象に近いこととは全く違う。
この魔法を何度も使用するうちに気づいたのが、魔法を発動しなくても何となく物の価値がわかるようになったことである。発動の都度に正確な答えが得られるわけであり、目利き能力が自然と鍛えられるのだと理解する。
「な?だから、ジモにでもあげるならば親父が作れる高級上位を入手するか、俺が作る中級品が良いと思ったんだよ」
「そうなんだ。私は素材を入手できたから良かったわ」
「私も何か掘り出し物を探さないと。ユリ、いつものように良い物があったら教えてね」
「まぁ良いけど、カミラ、自分でも訓練しないと目利き能力は鍛えられないわよ」
なんだかんだ言ってもカミラ自身も工芸屋の長女、後継ぎとして様々な素材に対して目利き能力を訓練しているのは知っているユリアンネ。あくまでも彼女たちのお約束のやり取りである。
ユリアンネ自身も調剤に使えそうな素材を探し、仲間たちも適当に各々が興味ある分野の掘り出し物を探している。月末のガラクタ市は出品者も多いため疲れはするが、いつもより買える物が増える。
「ユリ、どうしたの?」
「えぇ、ちょっと……」
立ち止まったユリアンネにカミラが声をかける。




