領主館の毒物騒動3
「ラルフさん、あのフードの女性って、あんたのところの娘さんかい?金髪の娘さんもそれなりに成長しているようだが、あの子もなかなかだな。どうだい、うちの息子のところに嫁に」
「いや、すまないが、あっちは一度外に出した娘だから。それよりももう1人の娘のところに婿に来てくれる男を探しているのだが」
「うーん、どうだろう。“木漏れ日の雫亭”の次代を担える若者なんてな……」
「まぁ当てを思いついたら教えてくれないか」
ラルフが、ユリアンネへの縁談を適当にかわしていることなど知らない本人は、必死に解毒ポーションの調合を行っている。
魔力が枯渇する前に魔力回復ポーションを飲みながら、必死である。
「ユリ、少しは休まないと」
シミリートからの声かけに対しても、まだ患者がいるからと続けている。
「ユリ、もう素材も無くなった。それに残ったのは軽症の人だけらしいぞ」
何時間経ったか分からないタイミングで、父ラルフの声で我にかえるユリアンネ。
気が抜けたのか、椅子に崩れるように座り込む。
「ユリ、大丈夫?お疲れ様」
姉アマルダが抱きしめてくれる。
「ありがとう。少し休ませて貰うわね」
目を瞑り休む。そうすると魔力の回復が進むのもそうであるが、実際のところ余計な雑音を遮断したい意図もある。
「うちの団員を後回しにするとはどういうことだ!」
「重症者を優先しただけですよ。それに今は素材も切れたので、西方に陣取っているルオルゾン領軍からの追加物資待ちです」
遮断したかったのは、王国騎士団のワイスプロット大尉の行動である。
「ここは治療のための部屋です。回復した方は順次退室をお願いします」
彼より上位の子爵であるフスハイムの言葉であれば、独立騒動を起こした敗軍側のストローデ領の貴族であっても従うようであった。




