盗賊3
「我々は銀虎騎士団である。双方ともその場に止まるように」
先日野営で一緒になった伍長インハルト達とは違う領軍のようである。
「これは領軍の皆様。我々はあの盗賊に襲われたので返り討ちにしようとしていたところでして」
先に盗賊が領軍に話しかけることで、襲われたこちらが疑われたような目を向けられる。
「何を!お前達が騙して俺たちを襲ったんだろうが!」
「まぁここで我々を前に自分が盗賊という奴もいないだろう。双方の話を聞かせて貰おう」
ユリアンネの魔法使いらしい姿と、盗賊達が受けた火魔法の燃えあとを証拠と言われていったん立場が悪くなりかけたが、近くで野営準備を継続していたジーモント達の話をし、6人パーティーのうち3人だけが自分より人数の多い6人を襲う不合理さを理解して貰う。そしてそちらの3人も合流させて貰い、辻褄が合っていることを再確認、そうこうしている間に逃げ出そうとした盗賊達の不審な行動から、どちらが正しいかを理解され、無罪放免となった。
「今回は俺の判断ミスだった。みんな、特にユリ、すまなかった」
「逆にあの治療の依頼を断っていたら、相手が普通の冒険者でも盗賊でも悪い噂を街に流されて面倒になったかもしれないし、判断は難しいよ。仕方ないよ」
シミリートの謝罪に皆がフォローする。
「あの6人、流石に領軍からは逃げられなかったな。その場で始末されていたし」
「あいつらの常勝だったと思われるパターンからは火魔法で逃げ出して時間稼ぎできたし、遠目に目立つその火魔法が領軍を呼び寄せたらしいからユリのお陰で助かったね」
「薬瓶2つは勉強代になってしまったわね」
「それよりも人を相手に戦うなんて、2度とゴメンだね。シミは衛兵になるならそれが日常になるのかもしれないが」
「ねぇ、領軍って衛兵みたいなこともするのね」
「迷宮内で魔物を狩るついでなら、見つけた犯罪者の断罪もする感じなのかな」
いったん安堵はしたものの、再び恐怖が湧き上がってきたユリアンネを見た仲間達が、黙り込まないように話を続けて野営の焚き火にまで連れ戻す。
「ユリ、怖かったでしょ。私たちが一緒に寝てあげるわよ」
カミラとゾフィがユリアンネに抱きつくようにして夜を明かす。




