盗賊2
盗賊6人に囲まれるところは何とか切り抜けたものの、シミリート、ユリアンネ、ヨルクの3人は簡単に逃げ切ることは出来ない。
そして、体型的に走るのが苦手なドワーフのヨルクが足をもつれさせたところで敵の矢が当たってしまう。
そのヨルクをかばうようにシミリートが盾を構えて前に立ち、あわせてユリアンネが≪火炎≫を追いかけてくる盗賊に発動する。ヨルクは右腕に刺さった矢を抜き、ユリアンネに貰ったポーションを傷口にかけてから戦斧を両手で構える。
「さぁどうしようか。ユリアンネの魔法のおかげで何とか耐えているが、そもそも相手は倍の人数。それにこの階層で盗賊をすると言うことは地力も経験もきっと相手の方が上だろう」
「シミの言う通りだな。ジモ達まで後少しで合流できても厳しいな」
いくら前世より命が安そうな世界ではあっても、こんな若死にはしたくないユリアンネ。先ほどは死に物狂いで敵に魔法を発動したが、魔物と違う人を相手にするということへの恐怖が湧き上がってくる。
「ユリ、大丈夫か?」
「えぇ、何とか……」
「どうする?降伏するか?少なくともユリの命は助かると思うぞ」
「え!?嫌よ!命は助かっても死ぬより辛い目になるのが分かっているじゃない!」
「そうだ、その元気だ。さぁ、もう一度走るぞ!」
「……ありがとう……」
再び走り出そうとしたところで、複数の矢が盗賊たちとユリアンネたちの間に降ってくる。
「双方とも止まって貰おうか」
逃げるのに必死で周りを見ることができていなかったが、矢の飛んできたところに領軍の1分隊ほどの人数が集まっている。




