治療行為
シミリートとヨルクにユリアンネが挟まれる形で3人が行った先は、岩場の陰で焚き火を横に男性が1人寝かされている場所であった。
案内してきた男性が、寝かされている男性の左腕の服をまくりあげる。血がにじんだ布が巻かれていたが、それを剥がすとおさまっていた血が垂れてきて、痛みに寝かされた男の顔が歪む。
「もっと優しく頼むよ」
「いや、治癒する時にこんな汚い布が体に埋め込まれたくないだろう?」
「どうだい?お願いできるかな?ハイオークの剣に斬られたんだ。薬瓶を切らしてしまって。それに色がちょっと変だから毒なども気になって」
「わかりました」「頼むな」
シミリートが返事をしつつ、万が一のためユリアンネの名前を出さないように会話をする。ユリアンネも無言で傷口を見て、傷回復ではなく解毒の薬瓶を取り出しシミリートに手渡す。
「どうも毒のようですね。こちらをまず使用しますね」
「やっぱりか。診て貰って良かった。頼むよ」
寝ている男の横にはシミリートがしゃがみ込み、解毒ポーションを腕にかけていくと黒ずんでいた傷口の色がおさまっていく。
続いてユリアンネに手渡された傷回復ポーションを腕にかけると傷口自体も塞がっていく。
「おぉ、少し小さいのになかなか上等なポーションだな。瓶の開け方を見ても、やはり噂になっている奴のようだな」
「効果はご覧のとおりです。では、薬の代金を頂けますか?」
「あぁ、この効果なら中級だよな。相場は銀貨5枚、それが2つだから銀貨10枚。街で買ったらそれぐらいなのと、噂の人気商品だから、迷宮の中ではこれぐらいかな」
寝ていた男が起き上がり、近くにあった背負い袋から硬貨を取り出そうとした素振りで、取り出した短剣を、周りを警戒して背中を見せていたヨルクに投擲してくる。
「人に施せるほどポーションの余裕もあるのだろう?それも貰ってやるよ。魔法使いの女は色々と有効活用させて貰うがな」




