代官夫人マルゴット
「流石に寝込んでいる女性の部屋に……」
「分かっているよ」
代官アナスガーが妻マルゴットの部屋の前へ皆を案内するが、カミラがシミリート達に廊下で待つように伝える。
「え?」
逆にアナスガー達は治療を行うユリアンネとせいぜいもう1人、ローブ姿のドロテアぐらいと思っていたところへ、強引にカミラとゾフィも室内に入り込む。病人の部屋の入口で騒ぐわけにもいかないことから、アナスガーも代官館の女中達も無理に追い出したりはしない。
ベッドから上半身だけ起こして、肩から羽織物をかけられたマルゴットが不思議そうな顔をする。
「あなた、こちらの方々は?もしかして!?私なんかには不要です。山脈の魔物退治を頑張ってくださっている方々の治療へ優先してください」
「マルゴット、そう言わずに。ここまで来てくださったのだ。それに今晩はお前の治療をすれば寝て魔力回復もできるはずだから、遠慮などしなくて良いのだぞ」
「あなた……」
「ではお願いします」
アナスガーが、ユリアンネの方を振り向いて促す。ユリアンネもフードなどのままなので、大きめな頷きにより承知した旨を示して、ベッド脇に移動する。
「失礼します」
大きな杖を魔法の収納袋から取り出し、骨折か捻挫をしたと思われる足の上にかかる布団をめくる。本当は触診でもした方が良いと思いながら、貴人の身体に直接触れることを問題視される可能性もあるので、そのまま薄い寝間着のスカートの上から中級回復魔法の≪回復≫を発動する。
「な!ぐぅ!」
回復するよりも逆にマルゴットがうめくので、カミラの冗談が本当の可能性を疑いつつ、今度は≪軽病治療≫を発動しながら高級ポーションを振りかける。
「ぎゃあ!」




