火魔法の魔導書3
ユリアンネは既に慣れていた≪水生成≫魔法で使用する魔力量を半分にすることが、意外と難しかったが、何とかそれっぽく実現することができた。
今度はその魔力量で≪火生成≫を試してみる。今までは魔力を水属性に変えていたが、火属性に変える必要がある。火属性の触媒を使用すると練習していたことがバレる可能性もあるので、まずは無でやってみる。
ロルトは焚き火を見ながらやったというが、コッソリと練習しているユリアンネには難しい。そこで、前世のロウソクの火をイメージする。化学実験などで使用したガスバーナーの炎も思いつくが、もっと回数も多く記憶に残っている誕生日ケーキなどでも使用していたロウソクの火ならば、安定した小さな火であるし、大火傷もしないと思うからである。
1度目はぎこちない詠唱であり何も起こらず、2度目は杖の先に赤色の魔法陣が現れるところまで、3度目はその魔法陣の先に何かくすぶった煙が出て、4度目でようやく小さな火を発生させることができた。≪水生成≫でも最初は少量であったことから、練習すればもう少し大きな火になることが期待できる。
≪火球≫は裏庭で練習できる内容ではないので、≪火生成≫のみの練習を続けることにした。
やってみながら改めて思うのが、魔法発動の呪文は前世でのプログラムみたいである。教科書の見本のプログラムをみながら、変数などちょっと変えてみたり、複数の見本を組み合わせて作ったりという“情報”の授業内容を思い出す。
これらが上手くいけば、≪火球≫の属性のところでignisをaquaに変えるだけで≪水球≫という魔法が発動できるのでは無いかとも考える。
さらに思ったのが、魔法の各属性への適性うんぬんの前に、知識の有無による習得機会の差が大きいということである。ユリアンネは、たまたま先に詳細記載のラルフの魔導書を閲覧でき理解していたからこそ、ロルトの魔導書の記載レベルでも習得できたのであろうが、ロルトの魔導書が先であれば記載量も少なく難しかったと思われる。
ただ、前世知識からの、体の中の作りを理解しながら、水分子のことや酸素が燃えるということも考えながら練習できるというのも他者との差分であることには思い至っていない。




