火魔法の魔導書2
ユリアンネは火魔法の魔導書の写本に取り掛かる。ラルフの魔導書に比べてかなり簡易な記載内容であった。
ラルフの魔導書では、最初に現代語で水属性についての簡単な解説と、この本で記載されている水が生成される魔法のイメージを文章で説明してあった。その上で、呪文の魔術語についての解説と魔法陣の解説がそれぞれの記載と一緒に書いてあった。だからこそ、ユリアンネも理解できて習得できたとも言える。
一方、ロルトから貰った火魔法の魔導書の記載はかなり薄く、現代語による解説は魔法のイメージ、魔術語、魔法陣それぞれに対して極少量であった。ただ、ラルフの魔導書は水を生成する魔法≪水生成≫aqua-generateが1つだけであったのに対して、ロルトの魔導書は、火を生成する魔法≪火生成≫ignis-generateと火球で攻撃する魔法≪火球≫ignis-globusの2つの記載があった。
魔術語の表現は3つの魔法とも似た感じにも思えたが、≪水生成≫呪文の最初の魔力量に関するdedicare-decemが、≪火生成≫ではdedicare-quinqueとなっており、decemの10ではなくquinqueの5になっていた。また、魔力を属性変換するconversion-attribute-aquaが、水のaquaから火のignisになっている。
さらに≪火球≫は属性変換の後に、球を作り、投げるという2工程が追加されていた。結果、「dedicare-decem、conversion-attribute-ignis、generate-globus、iacere-globus。ignis-globus」と長く、新しい魔術語も増えている。
ユリアンネは火魔法の練習を自室でするのは危険なため、水のバケツを近くに用意して裏庭でコッソリと試してみる。もしアマルダに見つかると水魔法を習得済みであることも疑われるからである。
まず火属性を試す前に、魔力量quinqueに慣れるため、習得済みの≪水生成≫で使用魔力を半分にして、生成される水量も半分にするイメージで呪文もquinqueに変える練習をする。




