ステルビア国内
翌朝、さっそく西のアルソットの街に向けて出発する一行。
「全然平地がなくて山が続くんだな」
シミリートが休憩時に仲間に呟くとウィンデルが拾って答えてくる。
「そうだよな。このステルビア王国は山が多くてな。トリアンダンジョンのような魔物素材が少ないだけでなく、農作物も少ないらしいぞ」
「そうなんですよ、それに雨が少ないので小麦の栽培が盛んなのですよ。ピザやパスタをたくさん食べられていましたよね」
横からクロリスが補足する。
「どっちも美味しかったけれど、肉をもっと食べたいな」
というヨルクの希望に合わせて昼食は先日倒したオーク肉を食べることになる。
このステルビア王国の中を進んでいても、確かにモンタール王国側において体験した魔物の異常発生は無いようで、森狼のような獣系の魔物をたまに見かけるだけであった。
おかげで休憩の際に周りへの警戒もそれほど気を張る必要がなく、ジーモントやゾフィたちは先輩冒険者からの指導を受ける余裕が続いていた。
先輩魔法使いのアントニウスから≪風刃≫の魔導書を譲って貰っていたユリアンネはその流れには入らず、シャドウとフェザーとの会話が多くなっていた。彼らはまだこの地方の言葉が不十分であること、兄シャドウは武技を習得済みであること、妹フェザーはそれほど他者と積極的に関わらない感じであったこともあるからである。
元々シミリートとの会話も増えていたのと、ユリアンネが回復薬や精霊魔法のことなどをフェザーと話す機会が増えたので、この兄妹も発言が少しずつ増えて来ている。
先日、金級冒険者エックハルトの仲間の銀級冒険者シグランが精霊魔法で風を操っていたことをフェザーに聞いてみたが、フェザーは風の精霊とは契約をしていないので同様のことはできないとのことであった。
ユリアンネは、一言で精霊といっても色々なタイプがいることを認識するのであった。




