刃魔法の考察
ユリアンネは宿屋で薬草の調合を早々に終わらせた後、入手した≪風刃≫の魔導書を読み始める。
習得済みの≪そよ風≫がventus-generateであり、≪氷刃≫がglacies-ensisであったので、≪風刃≫はventus-ensisとの推測をしていたが、その通りであった。
以前に、≪火球≫ignis-globusの属性を水に変えたaqua-globusが≪水球≫になるとの推測したのと同じ理屈である。
そうなると、刃魔法の派生を考察してみたくなる。光闇と違い攻撃力のある実体を持たせられそうな火風水土の4属性で、風以外となると火水土である。
確かに≪火刃≫は怖いが、切り裂く力のイメージはわかず、火としての攻撃力だけでは≪火球≫や≪火炎≫の方が威力はありそうである。
≪水刃≫も≪氷刃≫には劣るイメージしかない。水を高圧で噴き出すと様々なものを発熱なく切断することができる前世知識はあるが、単なる刃の形の水ではイメージが難しい。
最後に土属性であるが、≪土刃≫は強くなさそうで、≪石刃≫ならば石器時代の武器と同等に思えるので、そこまでの切れ味はイメージできない。
また、これらは初級の≪風刃≫の属性を変えただけであるが、≪氷刃≫が中級なのは、水に比べて氷を作り出すところで中級なのかと思える。
結局、≪氷刃≫以外で使い物になりそうなものは不可視であり鋭さもある≪風刃≫だけかとユリアンネは考える。
その≪風刃≫も普通の空気を刃の形にするだけでは威力に期待できない。“かまいたち”のような気圧バランスによる裂傷をイメージするより、既に習得している≪氷刃≫と同様にするため、高密度な空気を刃の形にして飛ばす方が分かりやすかった。
≪そよ風≫などの風魔法の習得の際に、窒素と酸素の分子を増やすことで気圧変化をさせた応用で、刃の形にこれらの分子量を増やした高密度な空気の刃を作る。
流石に宿屋の部屋内で飛ばして試すわけにいかないため、手元で作成する以上のことはイメージトレーニングまでにとどめる。




