クロリス商会からの勧誘
「少し良いかしら。そう、そのローブのあなた」
「何かご用でしょうか」
クロリス会頭がユリアンネに直接話しかけてくるので、シミリートが間に立って代わりに意図を確認する。
「あら、警戒させてしまったのね。ごめんなさいね。悪気は無いのよ。少しそちらでお話しませんか」
費用は払うというクロリスに従い、シャドウ達も含めた8人全員が料理店の個室に案内される。
「では改めて。私、クロリス商会の会頭のクロリスです」
クロリス以外の商会の者や直接雇用の冒険者4人も着座しており、かなり大きな個室である。
「はい、先ほどまで護衛をさせていただいておりました“選ばれた盟友”の6人と、こちらはシャドウとフェザーです。本当にご馳走になって良いのでしょうか」
「あら、こちらのお金ぐらいも払えない小さな商会と思われているのかしら」
「い、いえ、そんなことでは!」
「冗談ですよ。優秀な冒険者の方々とのご縁にはお金を惜しまないことにしているだけですよ」
「優秀、ですか?エックハルトさんとシグランさんではなく?我々は銅級以下ですが」
「えぇ、特にリーダーのあなたシミリートさんと、そちらのローブの魔法使いの方。そちらの方はポーション調合の腕も良いみたいね」
シミリートがカモフラージュとしてポーション提供の窓口にはなっていたが、しっかり見ている人にはバレていたようである。
そしてその後は、西に向かう別ルートを考えているのでできれば一緒に行って欲しい、と告げられる。本当はこの方々のように専属になって欲しいと、同席している4人を紹介する言葉と合わせて。
そして別れ際に、名刺メダルをシミリートとユリアンネに渡される。これは、前世での名刺ほど簡単に配る物ではなく、貴族や豪商が認めた証として渡される物であることを商家で育って認識しているユリアンネたちは、クロリスの本気度合いを理解する。




