モンヴァルト山脈の上位ハイオーク3
「助かりました。ありがとうございました」
先発グループの冒険者の取りまとめをしていた、“勇敢なる戦線”リーダーのイエルが代表して感謝の言葉を口にする。
推測通り、彼らもハイオークの襲撃を回避するために夜になっても森を抜けることを優先したらしい。しかし、森を抜けたところで小休憩をとっていると次々と森の中から上位ハイオーク達が現れて防戦につとめていたところだったとのこと。
この山脈を何度も経験している商人や冒険者が集まって相談するが、やはりここまでのハイオークたちの発生は異常との認識である。
今は夜で真っ暗であり、もう少し森から離れたところで、両グループによる合同の野営を行うことにする。
特に先発グループには怪我人も多く、商人達が手持ちの魔法回復薬を提供しても間に合わない。面倒を避けるためユリアンネが直接ではなくシミリートが代表して、多くの中級の傷回復ポーションを配ったことで、怪我人を残さず助けることができた。この護衛業務が終わったところで割り増し金額にて清算されるとのことである。
通常なら夕方から野営準備をするものだが、両グループとも森を抜けることを優先して行軍を進めていたこと、森を抜けたところで上位ハイオーク達との戦闘であったのでクタクタである。
しかし、通常のハイオークですら上等の肉と言われているのに、それより1ランク上のハイオークファイター達の肉が目の前にある。ジーモントがヨルクに催促されて調理を始めたように、同様のことがこの何十人もの集団で発生し、幾つものかまどから脂ののった高級豚肉を焼いたり煮たりする匂いが立ち上る。
お腹も膨れたあとは眠りにつく。もちろん馬車の数も多く死角も増えるため、それなりの数の見張りが常にいるように交代しながらである。




