オーク撃退
馬車の円陣から外側のオークにまで攻撃を加えられるようになったのは、やはり銅級冒険者の力が大きく、ユリアンネ以外にもシミリート、シャドウ、アディーレがそれぞれの場所で主導権を握っている。
商人や御者達も出来ることとして、適当に転がっている石を、馬車の下の隙間から外へ向かって投げることで、ダメージにはなっていなくてもオークの気を逸らすことには成功している。
ゾフィ、フェザーは矢が尽きるとダガーを手に、イルヤも早々に片手剣を手に戦いに参加している。倒したオークを手前に引きずり出すのは、途中から御者達が分担している。
少しするとジーモントやシミリートのところは余裕ができて他方面に人を分散派遣できるようになり、最終的にはオーク全てを殲滅することができた。
「追加が来るかもしれないから、念の為いったんかまど付近に集合しよう」
シミリートが声をかけていき、怪我人も含めて円陣の中心に集まる。
「まず怪我をした方は、小さいものでも申し出てください」
傷の大きさにより、中級の傷回復ポーションを配るかユリアンネの≪治癒≫魔法かを使い分けた。今後のこともあり傷回復ポーションの消費を抑えるためである。シャドウは盾もない前衛でそれなりに傷を負っていたはずだが申告せず、妹フェザーに薬を塗ってもらい、フェザーがその傷付近に右手を当てながら何か唱えているのをユリアンネは興味深く見ていた。
「すまないね、手持ちはさっき使ってしまって」
アディーレが自身やヘンドリク達の傷のためにポーションを受け取りに来ている。
「皆さん、ここまでの襲撃は想定外でした。そのため、治療にかかった費用は我々が負担します」
商人のディッキーとベンヤミンが意識合わせをしていたようで、ディッキーが宣言する。




