2度目の護衛依頼
早朝にモンブロワの西門に向かった“選ばれた盟友”が合流したのは、荷馬車2台の依頼主であった。
その神経質そうに痩せた男性商人ドミニャスにシミリートがリーダーとして挨拶をしてメンバを紹介するが、商隊の他メンバが出てこない。
「あの、他の方はまだですか?」
「何を言っている?この7人で全員だぞ。隣の街に行くだけじゃないか。十分だろう?」
「え?御者の方は?」
「はぁ?護衛依頼も初めてでは無いのだろう?お前たちがすれば良いだろう?」
「それでは、魔物が出たときに困るかと」
「御者で無い者が対応すれば良いだろう?銅級冒険者が2人も居ると聞いたぞ。十分だろう?」
これ以上は何を言っても会話にならないと諦めて、仲間達と役割分担を相談する。
こんな依頼主では御者が下手だとかなり文句を言われるだろうから、先日までの護衛依頼の際に少しでも多めに練習していたゾフィ、ユリアンネの2人が御者になる。自分達のものになった馬2頭にはシミリートとジーモントが騎乗し、ヨルクとカミラは御者台に同乗して今後のためにも練習をすることにする。
依頼主は少しでも効率良く荷物を運びたいようで、あまり隙間も無い荷馬車の荷台の端に乗り込んでいる。
少しは練習したとはいえまだまだ素人に近いゾフィとユリアンネの御者ではスムーズな出発とならず、すぐに
「下手くそだな。荷物を傷つけるなよ、何かあれば賠償させるからな」
とドミニャスが荷台から声をあげて来た。
「申し訳ありません、気をつけます」
とシミリートが近寄って謝りつつ、仲間たちには、まぁまぁというジェスチャーをする。
2度目の護衛依頼は前途多難の気配である。




