刺客
はじめての護衛依頼での野営中に、刺客に狙われたユリアンネ。
片手剣の二刀流の男ヴァレマンと、ダガーを投げ捨てて魔法の杖に持ち替えたリリアンナに前後を挟まれている。
馬車で組んだ円陣の隙間からかまどは見えないが、その明かりでシミの寝顔が見える。こちらの命が危ない中で呑気に寝ているとムカッとするが、そこを気にする余裕もなくヴァレマンの片手剣が襲ってくる。
体術に優れるわけでも無いユリアンネは何とか避けようと自身の杖を盾にしようとするが、先ほどダガーでかすめた左腕の痛みで動きが鈍り、さらに左腕を切られる。
『もう!シミ!!助けて!!!』
シミの耳元に大声が伝わるように風魔法を操った後は、全力で走り逃げようとするが、体が鈍い。
「毒が効き出しただろう」
とニヤつくヴァレマンに無詠唱での≪火炎≫を発動するが、その隙に背後からのリリアンナによる≪石球≫がユリアンネの無防備な背中を強打する。
「観念しろ!」
いったん両手の剣を手放して着火した上着を脱ぎ捨てたヴァレマンが再び剣をとり、背中の痛みでしゃがみ込んだユリアンネの前に来ようとしたところで、鉄鍋を乱暴に鳴らす音とシミリートが何か叫ぶ声が聞こえてくる。
「チッ、起きたか。せめてお前だけでも!」
次に取り得る選択肢は≪火炎≫での攻撃、ポーションによる解毒か傷の回復と一瞬考えるが、魔法の収納袋から薬瓶を取り出す思考よりも目の前に来る恐怖に対して即効性のある≪火炎≫を無意識にヴァレマンに対して発動してしまう。
「くそ!」
今度はすぐに脱げる服もなく転がって消火するヴァレマン。ホッとする間もなく、再び背中を≪石球≫による強打が襲う。




