はじめての地上野営2
「ユリ、交代だぞ」
シミリートに起こされるユリアンネ。
「シミ、ありがとう。結構話せた?」
「あぁ、アルフィルさんは流石だ。色々と勉強になる話を聞けたぞ。じゃあな、おやすみ」
かまどの火が消えないように枝をくべる以外は、できるだけ周りを見てまわるようにしているユリアンネたち。3人がバラバラに離れた方が効率的な見張りをできると提案され、結局リリアンナと話す機会がなく残念に思いながら暗い森の中に異常がないかを見ている。
「ユリアンネさん」
急にリリアンナから小声で名前を呼ばれて驚いたところに続きを言われる。
「お花を摘みに行きたいのですが……」
「あ、はい分かりました。近くで見張っておきますね」
できるだけ女性を同じ組にしたアルフィルの差配に改めて納得するユリアンネ。
「ユリアンネさん、こちらご覧ください」
少し奥に行っていたリリアンナが戻ってくる気配の中で足を止めたところに呼ばれる。ユリアンネが茂みに入り、入れ替わりにしゃがみ込んで覗き込む。
「あらこれはドクダミ、十薬ですね。利尿薬や消炎薬に使われますね。臭いで気づかれました?ん?リリアンナさん?」
完全に無防備であったユリアンネに、リリアンナが短剣を突き出して来る。しゃがんでいたのを立ち上がろうとしていたところだったので狙いが逸れたのか、左腕をかするだけで済んだ。
「やはりお前だったんだな、薬師は!カミラ、ゾフィ達の仲間の薬師、お前のせいで!」
さらに何度もダガーを突き出して来るが、相手も得意武器ではないようで野営の中心、かまど方面に向けて逃げ出す。
『え!?もしかして“蒼海の眼”?』
混乱しながら走ろうとするが、茂みから出る前にヴァレマンが立ち塞がる。
「リリ、やはりこいつか?」




