はじめての地上野営
“選ばれた盟友”の6人は、トリアンダンジョンの中で野営をすることは何度もあったが、この地上での野営は初めてである。
馬車で円陣を組んで真ん中にかまどを作ったり、馬車の幌を伸ばして屋根のようにしたり、良く知らない他人と一緒の夜を明かすことには慣れていない。
「ダンジョンは階層ごとに現れる魔物の種類が少ないから、対処も限られていただろう?ここでは何が来るか分からないから気をつけろよ」
「若い子を脅かしてやるなよ。まぁここでは森狼がほとんどかな。ただ、毒蛇とか蜘蛛とか、可愛いところでは蟻とか、ダンジョンでは気にしていなかったような小物も意外と安眠の邪魔になってくれたりするからな」
引き続き“赤い同志達”の6人は何かとアドバイスをしてくれるが、男女2人組の方は誰とも最低限の会話しかしていない。
「さて食事も終わったし、見張り番の順番を決めるとしよう。なんだかんだと野営の経験はダンジョンであるだろうが、“選ばれた盟友”だけの組を作るのは避けさせて貰う。悪いな」
知的なことなど実務を仕切っているようであるサブリーダーのアルフィルが、見張り番の組合せを指示して来る。
ジョエタン、ティスパルとヨルク、ゾフィ。アルフィル、エミリアンとシミリート。ヴァレマン、リリアンナとユリアンネ。リスチュー、ランセリアとカミラ、ジーモント。
“選ばれた盟友”でも鉄級はペアを組ませているだけでなく、盾と弓はそれぞれ同じ組に複数にならないように散らす、女性はなるべく同じ組に入れるが奇数のところは皆の寝入りが浅い初回に当てる等の配慮がされている。
「この人数だから何かあったときに起こして回るのは大変だ。このかまど横に置いた空の鉄鍋をドラのように鳴らすんだぞ」
との相変わらずのアドバイスを受け、昼間はあまり話せなかったリリアンナと話せるかなと期待しながら眠りにつくユリアンネ。




