はじめての護衛依頼3
昼休憩の後も草原が続く間には、それなりに仲良くなった御者台の相方から、ここはほぼ真っ直ぐの道だから御者を経験してみるか?とユリアンネ達は手綱を持たせて貰う。
確かに手を離しても良いぐらい素直に馬は進んでいるため、手綱を交代したくらいでは馬も暴れない。それにすれ違う馬車が通るときや徒歩の人を追い抜く時には基本的に御者が手綱を左右に指示したり停止させたりするので、それを見て学ぶ程度であった。
そしてある程度進むと事前に言われていた森に入る。まだ太陽が出ている時間なのだが、先ほどまでの草原と違い薄暗く感じるほどの森である。
「魔物があふれる魔の森に比べてこの森は安全なところだから、気を入れすぎるなよ。くれぐれも、魔物を見つけても合図するまでは攻撃するなよ」
道も心なしか細くなったためか、先輩冒険者達の騎乗する馬が馬車に近づいて来て注意喚起をしてくれる。
ユリアンネも、あ!と何度か遠くに魔物か通常の獣か判断がつかない狼らしき物を遠目に見つけるが、先輩冒険者からの合図が無いためそのまま御者台で待機する。戦闘にはならず商隊が通り過ぎるのを見送られるだけで終わり、無駄な消耗を回避できたのだと認識する。
しかし、今度は何頭か見えると思えたときに、
「準備しろ!今度は多い!まずは遠隔攻撃だけで逃げ切れるならば逃げる。ただ、追いかけて来て野営に不安が残りそうならば停車して撃退する!」
サブリーダーのアンフィルが丁寧な指示をしてくる。
遠隔攻撃ができるのは、ゾフィと“赤い同志達”のエミリアンの弓矢、魔法使いのユリアンネとリリアンナだけである。
「今だ!右前が近い、あの2頭を狙え!」
アンフィルが隊列の先頭付近で騎乗しながら周りを把握して指示を出してくる。
役割分担も指示されていなかったことと、森への類焼が怖いのでまずは様子見のために≪火球≫を2頭それぞれに発動する。何の魔法が使えるかは仲間以外には教えるなと言われていたし、ジョエタンやアルフィルも聞いて来なかったので伝えていない。




