トリアンからの旅立ち2
「じゃあ皆さん、出発しますよ」
「はい、すみません、今行きます!」「じゃあね、皆さん、お元気で」
痩せた商人に声をかけられて、シミリートが返事をして馬車群に駆け寄る。
ストローデ領の領都であるトリアンから王都シャトニーに行くには西に向かうのだが、途中にルオルゾン領、ローニョレ領、そして王領の順の長い旅になる。
経路としては当然に主街道だけで向かえるのだが、そこまで長い距離の乗合馬車は無い。乗合馬車を乗り継いで行く選択肢はあるが、乗合馬車はあくまでも商売であり、6人がそれぞれ乗車客として運賃を払っていくとかなりの金額になってしまう。
ただ冒険者である“選ばれた盟友”の6人には、商人の護衛依頼を受けるという選択肢もある。しかし、護衛依頼への経験が無いどころか、乗馬や御者の能力も無い。唯一、シミリートが衛兵団で少しだけ乗馬の訓練を経験しただけである。
そのような冒険者パーティーにそれほど長距離の護衛を依頼する商人は居ない。
結果、少しでも早く領都トリアンを脱出した方が良いと考えたこの6人は、トリアンの中で訓練をするのではなく、近くの街への護衛依頼で経験を積むことを選んだ。
当然、いくら近場への移動であっても、魔物や盗賊という危険性があるからの護衛依頼であり、依頼主の商人としても本命の冒険者は別に雇っている。
荷馬車が3台、商人達が乗る馬車が1台の大所帯であり、もう1パーティーの方が騎乗できるメンバばかりであるので、素人6人も数合わせのために雇ってくれるとなった。いざ戦闘になれば、銅級2人、さらに片方は魔法使いということにも期待されている。
シミリートが衛兵であることは要らぬ詮索を招きかねないので内緒で通すことを、仲間内で意識あわせしている。シミリートがポロッと話してしまうことだけが心配されている。
またこの護衛には、急遽で2名の騎乗できる冒険者達も追加されている。どうも西に向かう用事ができたのだが、2名だけで行くよりは同行者がいる方が安全ということで、相乗りして来たという。
急遽決まって遠くへ出かけることになったユリアンネ達。不安と期待がいりまじる旅立ちであった。




