トリアンからの旅立ち
懸念であったユリアンネとシミリートもそれぞれ周囲の大人達がトリアンを出るよう促してくれたおかげで、“選ばれた盟友”の6人は一緒に旅立つことになった。
特に明確な目的があるわけではなかったが、王都を目指すことになっている。
それぞれの両親達からは、その商売に関係する王都、もしくはそこまでの道中の街々の知り合いに対する手紙を預かっており、必要ならば随時頼るように、と言われている。
「ユリ、オトマンさんの腰痛の薬は心配いらない。ちゃんと調合して届けるからな」
「ユリちゃん、オトマンさんの日常のことは隣のうちがちゃんと面倒見るからね。それよりも出来の悪い三男のことをよろしくね」
「俺のことか!?」
「あら、シミ、いつも気遣いができず秘密も漏らすあなたが今回は良く分かったわね」
「ぐ……」
ユリアンネは、同じように他の仲間の親からも頼りにされる。やはり前世にも積み重ねた年数分、行動が実年齢以上に落ち着いていることからの期待があるのであろうか。
「みんなしてユリばかり。一番年長は俺だというのに。ちょっとだけだけど」
「ヨルク、あんたは旅費を買い食いに使い切ってしまいそうで心配なんだよ。出来るならばあんたの財布をユリちゃんに預けて小遣い制にして貰いたいぐらいで」
「わかりました。カミラ、ゾフィと一緒にちゃんとヨルクのお腹を見張りますね」
旅立ちにあたり、シミリートとジーモントも両親から、魔法の収納袋を与えられていた。ともに1立方メートルの腰袋である。
ユリアンネもオトマンから追加で与えられ、中には多くの羊皮紙を入れて貰っていた。さらに中級水魔法の≪氷刃≫の魔導書も入っていた。
「何か別の機会に、と思っていたのだけどね。必要なときに写本を作って売り歩いたら生活には困らないよね」
「オトマンさん……」




