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1999
後で直すかもしれません。
空から何が降りて来るのか
わかりはしない
けれど
何者かが降りて来る
そう信じていた子どもの頃
スパイクタイヤに削られた
アスファルトの粉塵が舞っていた
毎晩のように発作を起こし
息をすることが難しかった
学校から帰ると
田んぼの畦道を歩いてイナゴを探し
水面を泳ぐ蛇に驚き
蛙が用水路に飛び込む音を聞いていた
空から何か降りて来る
冷戦が終わって
紛争はまだあっても
何が降って来るのだろうか
あまり信じなくはなった
数年後にはその年が来る頃
進学して独り暮らしを始め
毎日うろうろと歩き回っていた
強さを求めて道場に通い
うまくいかない恋に苦しみ
いつの間にか21世紀になっていた
予言の年から20年と少しが過ぎた
時々思う
実は何やら降りて来ていて
生きてるつもりでいるけれど
僕らはもう滅んでいるのでは?




