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霧
霧が出ると
どういう訳か歩きたくなる
公園で拳技を練り
夜明けの気配がしだした頃
少し離れた街灯がにじむのに気づいた
霧の中を
ふらふらと歩く
歩きながら思い出す
まだ見ぬ未来を夢見た歳の
憧れた人のこと
会わなくなった人のこと
会えない旧い友のこと
あの日もやはり歩いた霧の夜のこと
すっかり遠くに来てしまった
身体は冷えつつあって
帰らなければならない
帰らなければならないのだけれど
まだ
今に戻りたくなくて
さりとて
霧の中を過去に戻ろうとも思わず
夜明けの街が霧ににじむ
その中をいつまでも歩いた




