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墓参
古い友の墓へ行った
奴が死んで十年以上たつけれど
どうも実感がわかない
武を志した中学生の頃
毎日休み時間に拳を交えていた友だった
卒業式のすんだ後日
高校の合格発表の日が登校日で
中学最後の殴り合いだな、だの
また闘おうぜ、だのと言って
それきり会わなかった
人気の無い夕方
町を見下ろす山の中腹の墓地で
すぐに風で消える線香に
やっと火をつけて
他の誰かが置いていった缶ビールの下に供えた
墓参りをしても
なんだか奴がよくいたゲームセンター
そこに行けばいるような気がして
そのゲームセンターはもうない
そんなことも思い出して
多分ずっと
そんなふうに
元気かなあ、だの
また闘ったらどっちが強いだろう、だの
そんなことを思うのだろう




