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新緑
新しい葉の柔らかな緑
ほんの短い間だけ見ることができる
この世にある良いものの一つ
高校生の頃の通学路の
けやき
大学生の頃に好きな人と並んで歩いた
街路樹のプラタナス
生きてきた中で出会った
本当に美しく感じた新しい葉の緑
それらが支えとなって
今も生きていられる
今年の緑がそれらの一つに
なるかどうかは
わからない
わからないまま、眺めている
いずれ人の世も滅びる
その後にもきっと緑は美しい
何も残りはしないだろうけれど
いずれ滅ぶ者の一つとして
木々を眺め
新緑を吹きわたる風を感じる




